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2008年3月

3・23東京大集会

2008年3月23日(日)

「後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める東京大集会

Photo が、東京都武蔵野市の井の頭公園にて開催された。参加者は12,000人を超える人々が都内各地から参集した。

年金者組合東京都本部合唱団の合唱と和光青年団のエイサーで集会は幕を開けた。主催者を代表して吉田万三:後期高齢者医療制度の中止撤回を求める東京連絡会代表が開会あいさつ。吉田:全日本年金者組合東京都本部執行委員長、石川:足立生活と健康Photo_2 守る会会長、田倉:八王子市万町老人会「山百合会」会長、河邑:三多摩肢体障害者協議会、塩安:東京保険医協会会長の5氏がそれぞれの団体を代表し、「後期高齢者医療制度の中止・撤回を何としてもかちとろう」と力強くリレートーク。

Photo_3 その後、民主党:鈴木寛(参議院議員)、日本共産党:小池晃(参議院議員)、民主党:末松義規(衆議院議員)の3国会議員が力強い連帯のあいさつ。社民党:保坂展人(衆議院議員)、国民新党:自見庄三郎(参議院議員)、無所属:川田龍平(参議院議員)の3氏のメッセージが紹介された。

Photo_4 集会決議を参加者の大きな歓声で確認した後、国道をデモ行進してアピールしました。

「後期高齢者医療制度の中止・撤回をめざして、引き続き頑張りましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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事務局団体会議の報告

2008年3月13日(木)

3月の事務局団体会議の報告をします

3月11日(火)午後1時30分から、事務局団体会議が開催されました。以下、報告書を載せましたので、ご参照ください。また、ご意見をお寄せください。

 

22回日本高齢者大会in新潟・中央実行委員会

08年3月・事務局団体会議報告

2008311()13301700  会場:日本高齢者運動連絡会 会議室

 

(本日の会議の目的)

     記念講演についての経過と現状

     22回日本高齢者大会in新潟大会の企画確認

     3・12国会内集会「後期高齢者医療制度の中止撤回をめざす集会」

1.記念講演について

     この間の講演者のアタック状況

     企画会議でも検討し候補に挙がった方々、他にも要請した。

     米倉斉加年(俳優)…同時期に、長野で芝居。

     黒柳徹子…メールにて依頼書送付(返事待ち)

     瀬戸内寂聴…メールにて依頼書送付(返事待ち)

◎ 福井典子氏に相談し、アドバイスを受けた。

     渡辺治(一橋大学教授)

     二宮厚美(神戸大学教授)

     後藤道夫(都留文化大学教授)

     澤地久枝(作家)      等のお名前をお聞きした。

     どうする

     新潟県の高齢期運動を広め、高齢者大会の参加者を増やすためにも、誰にも知られている著名な文化人がいいという意見も尊重し、引き続き対応する。

     しかし、全国への周知の時間も限られており、上坪、山田、新潟実行委員会と最終的には判断する。

     澤地久枝さんは、昨年に大江健三郎氏と共に、新潟県9条の会の3000人講演会で講演された。

     その上で、第1候補…井上ひさし(作家)…上坪代表が連絡。

2.新潟大会の企画について、企画委員会及び新潟県事務局の報告をうけた。

     新潟県実行委員会では、この企画が大事であるとの認識で、準備を重ねている。3月25日の第2回県実行委員会では、篠崎顧問から学習講演をしてもらい、高齢者大会と高齢者運動についての理解と学習を深める。その上で、企画の最終確認をしていく予定。

     07年企画と対比した企画(案)を元に検討し、別紙のように確認した。

     学習講座

1.      後期高齢者医療制度

2.      介護保険問題

3.      生存権(裁判)と生活保護

4.      最低保障年金と財源問題

5.      新自由主義とグローバル経済

6.      規制緩和と格差と貧困

7.      地球温暖化、食料・エネルギー問題

8.      社会保障と消費税大増税の問題

     分科会

1.      平和・基地問題、9条

2.      地震列島日本の原発を考える

3.      ささえ合いのまちづくり、WHO高齢者に優しいまちづくり

4.      医療問題

5.      生きがいと仕事

6.      高齢者の移動(交通)問題

7.      何でも井戸端会議

     移動分科会

1.      新潟の自然を満喫する、花卉(かき)と豪農の館見学 *

2.      自然と環境・公害問題を学ぶ(新潟水俣病を学ぶ)  *

     夜の企画

1.      お酒の話と利き酒(?)講座(新潟の米と水と酒)  *

2.      うたごえ企画                   *

3.      生活講座①「葬儀を考える」

4.      生活講座②「世界の文化交流」

5.      生活講座③「高齢者の性を考える」

6.      生活講座④「私たちの要求と自治体」

     特別企画

1.      山古志復興見学と温泉一泊企画(山古志村、蓬平温泉)*

(*印は特別参加費を徴収する企画…コースにより金額は別料金)

     上記分科会等の部屋割り(参加規模予測と使用する部屋の大きさ)については、今後あらためて検討する。

3.宣伝担当係から別紙提案を受けて、確認。

1.「連絡会ニュース」第140号(3月15日号)を発行したが、不十分さが残る。

2.新聞としての体裁を考えて、A3サイズの印刷機と紙折り器がほしい。

3.「後期高齢者医療制度」は高齢者の中で「後期高齢者」と特定しており、当連絡会に仕掛けられたような制度。年金・社保・医療を束ねた攻撃であり、当連絡会のガンバリ時。…この制度はアウシュビッツと同じ(上坪)

4.「連絡会ニュース」は当面、①中央の動き、②新潟の動き、③各地・各団体の動き、④関連する動きを伝え、大会成功に向けて①②を重点化していく。

4.各県地域連絡会及び団体の活動状況の交流

     静岡…県社保協と県高運連と連名で国会議員要請行動を起こし、野党4党共同提案の「廃止法案」の徹底審議を要請している。また、県広域連合長にも質問と要望事項をあげた。

     和歌山…全県キャラバン行動につづいて、各地で小集会(学習会)を開催している。大阪では、地方議会に中止の申し入れをおこなっている。

     東京…東京高運連の総会をおこない、会長等役員交代があった。会長・城田、事務局長・藤井。ニュースを再刊し、運動の交流を図る。社保協、年金者組合等と共同行動をおこない、東京高齢期運動の組織と運営方法の再確立をはかる。3・23東京大集会を準備している。新潟大会には500人参加の目標を達成したい。高齢期運動の担い手(活動家)の高齢化となり、新しい担い手(後継者)の確保と育成が課題。

     茨城…社保協と一緒に学習会を開催している。3/10ケアハウスで開いた学習会には50人が参加し、質問も多い。

     神奈川…2/26に県高運連総会を開催した。若干役員の入れ替わりがあり、活性化が図られたが、後継者養成と確保は今後の課題でもある。ニュースは毎月発行している。財政問題が深刻で、事務所維持が難しい。高齢者医療制度はようやく問題になり、老人の「怒り」になってきている。新制度の影響で、建設国保などは4億円の赤字になるなど影響が大きいことが次第に判明している。

     千葉…老人クラブを訪問して、知らせる活動を取り組んでいる。駅頭宣伝もおこなっている。県選出国会議員への働きかけも旺盛に展開中。乳幼児医療費は3才までのものがようやく小学校までとなったが、自己負担が引き上げられた。

     長野…後期高齢者医療制度の影響で国保値上げが問題となってきた。長野市では19.8%。諏訪市などは20%。学習会が開かれ、これではナチスのユダヤ人抹殺と同じで高齢者抹殺だ。医療費削減が狙い。署名を集めて、国会議員へ届ける。

     埼玉…2/18埼玉県民集会を開いて550人が集まった。集会後は地域総行動を展開中。八潮市では市の後援を得てシンポジウムが開く。6/10に、埼玉県高齢者大会を計画している。

     日生協医療部会…日生協健保組合の保険料値上げが4月から実施される。後期高齢者医療制度による支援金と負担金の関係だ。高齢者だけの問題ではなく、働く世代(若年層)の問題になっている。給与明細には支援金負担金と明記され、新しい世代間の不満が吹き出てくる可能性がある。

     和歌山…和歌山も国保料が値上げされる。6000円アップとなる。

     建交労…春闘で厚労省交渉している。シルバー人材センターテで最低賃金を下回っている地域が存在していることが判明し、この是正を約束させた。是正されると1000円の時給にアップする可能性がある。今の報酬では介護労働は改善しない。賃金を払えない状況があり、すぐにでも介護報酬改善させる必要がある。

     全生連…東京生存権裁判は3月24日に結審、6月判決予定。広島も同様の日程で動いている。

     老地連…3/1.2に全国老地連34回総会を開催した。憲法学校を開催しているが評判がよい。ニュースは900部を作成し、毎月全国に発送している。自民民主による憲法議員連盟の問題、高齢者医療の差別問題、介護の問題など、老地連らしい活動を展開してきたい。

     年金者組合…最低保障年金は財源問題を含めてたたかう。高齢者医療制度は中止撤回をざしての運動。3・13重税反対全国統一行動。

5.その他

     3・12後期高齢者医療制度中止撤回めざす国会内集会は明日です。ぜひ参加を。

     日程確認

     次回事務局団体会議 5月21日(水)13:30~

     日本高齢者運動連絡会総会 5月22日(木)10:00~14:00

     22回大会中央実行委員会 5月22日(木)14:00~17:00

     いずれも会場は日本生協連医療部会会議室(予定) 03-3497-9177

     (所在地)渋谷区千駄ヶ谷4-1-9(JR代々木駅下車10分)

日程が近づいたら、あらためてご案内します。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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3・12国会内集会

2008年3月12日(水)

「後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める3・12国会内集会」(衆議院第2議員会館第1会議室)

Photo 医団連(保団連、医労連、民医連、日生協医療部会、新医協、日患同盟)及び中央社保協主催による「後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める3・12国会内集会」が、本日午後1時30分から、衆議院第2議員会館第1会議室において開催されました。集会には全国から200人を超える人びとが参加しました。

国会議員25人があいさつ(他に、代理19人参加)

直接本人がお見えになった国会議員は25人。「後期高齢者医療制度の中止・撤回」を求めるとして、一人一人が全員あいさつされました。また、議員の代理で秘書も19人が参加し、集会の連帯・激励をしていただきました。民主党、日本共産党、社民党、国民新党の野党4党から多数の議員が参加されましたが、自民党からもお二人の議員が直接参加されました。(参加議員一覧をご参照ください)

会場発言

Photo_2 会議室に入りきれない人びとが集まって、集会は熱気を帯びたものとなりました。主催者を代表して全日本民医連の鈴木会長があいさつ、日本難病・疾病団体協議会の伊藤代表、日本高齢者運動連絡会の上坪代表、認知症家族の会の代表が来賓としてあいさつされました。集会では、東京社保協、尼崎社保協、パーキンソン病友の会、歯科保険医協会(枚方市)の4人の方が会場発言されました。

別掲 3・12国会内集会に参加した国会議員

衆議院

<自民党>二田孝治(比例東北)、広津素子(比例九州)、山中燁子(千葉2区:代理)

<民主党>岩國哲人(比例南関東)、大畠章弘(茨城5区)、近藤昭一(愛知3区)、階  猛(岩手1区)、山田正彦(比例九州)、(以下代理:枝野幸男(埼玉5区)、岡本充功(比例東海)、奥村展三(比例近畿)、川端達夫(比例近畿)、菊田真紀子(新潟4区)、北神圭朗(比例近畿)、髙木義明(長崎1区)、田嶋要(比例南関東)、柚木道義(岡山4区)

<共産党>高橋千鶴子(比例東北)、(以下代理:穀田恵二(比例近畿)、志位和夫(比例南関東)、

<社民党>重野安正(比例九州)

<国民新党>亀井久興(比例中国:代理)

参議院

<自民党>塚田一郎(新潟:代理)

<民主党>風間直樹(比例)、川崎稔(佐賀)、鈴木寛(東京)、富岡由紀夫(群馬)、中村哲治(奈良)、姫井由美子(岡山)、藤田幸久(茨城)、円より子(比例)、室井邦彦(比例)、(以下代理:大河原雅子(東京)、下田敦子(比例)、榛場賀津也(静岡)、

<共産党>井上哲士(比例)、紙智子(比例)、小池晃(比例)、仁比聡平(比例)、山下芳生(比例)

<社民党>阿部知子(比例)

<国民新党>亀井郁夫(広島)

<無所属>広田一(高知:代理)、外山斎(宮崎:代理)

アピールを全参加者で採択

集会では次のアピールを採択しました。

アピール

現在、4月から実施予定の「後期高齢者医療制度」について、見直しや中止・撤回を求める声が全国各地に広がっています。各地で、「だれが、決めたんだ」「年齢で差別され、犠牲が押しつけられるのか」「75歳以上はもう長生きしてはいけないのか」など、国民の痛切な叫びが寄せられています。

このような中、228日には野党4党共同で「後期高齢者医療制度廃止法案」が衆議院に提出されました。衆議院への法案の野党共同提出は、昨年の参議院選挙以降初めてであり、まさに国民の声でもあります。

後期高齢者医療制度は生活保護世帯を除き、従来の被扶養者も含めた75歳以上の全国民から保険料を徴収し、給付が増えれば負担も増えるという過酷な制度です。病気に罹りやすく、ケガをしやすい高齢者だけを集めた保険制度を多くの国民の反対を押し切って創設し、その結果生じる負担を地方自治体と国民の自已責任に帰すことは断じて許されるものではありません。

福田首相は、「年を取って良かったなあと言うことが実感出来るような社会にしたい」と128日の衆議院予算委員会で答弁しました。この答弁が本心であるなら、国の責任において、明るく豊かな高齢期を保障する立場に立って、与党はすみやかに本法案の審議に応じるべきです。

私たちは、医療崩壊をくい止め、誰もが安心して医療が受けられるようにするために引き続き奮闘するとともに、「後期高齢者医療制度廃止法案」を成立させ、同制度の実施中止・撤回を実現するために全力でたたかい抜くものです。

2008312

「後期高齢者医療制度の中止・撤回をめざす」312国会内集会

集会は、中央社保協の山田事務局長が閉会のあいさつを行い、この悪法の中止・撤回ににむけてのさらなる国民大運動の行動提起を行い、閉会となりました。

全国のみなさん  情勢は動いています。一人一人が各県・各地選出の国会議員事務所に行って、わたしたちの声を届けましょう。極悪非情な悪法の中止・撤回にむけて、あきらめないで、繰り返し要請をおこないましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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国会で「緊急集会」開かる

2008年3月5日(水)

野党4党主催「後期高齢者医療制度廃止を求める緊急集会」 (衆議院第一議員会館)

080305 3月5日(水)正午(午後12:00)から、衆議院第一議員会館第一会議室において、民主党、共産党、社民党、国民新党野党四党主催の「後期高齢者医療制度等廃止法案提出」の緊急集会が開かれました。各党議員が20名以上が出席する中、全国から後期高齢者医療制度の廃止を求める国民も大勢つめかけ、議員会館内には入りきれない集会となりました。私も中には入れずに、議員会館前の路上で行われた緊急集会に参加しました。

 ●議員会館緊急集会では、民主党山田正彦衆議院議員が開会および経過報告を行いました。民主党から鳩山由紀夫幹事長、日本共産党小池晃政策委員長、社会民主党重野安正幹事長、国民新党自見庄三郎政審会長があいさつ。各団体から、退職者連合阿保氏、年金者組合吉田氏、全国保険医団体連合会住江氏が国民の声をそれぞれ話しました。日本共産党高橋千鶴子衆議院議員がアピールを提案、社会民主党阿部知子衆議院議員が閉会およびがんばろうコールをして、緊急集会は行われました。

080305_2 ●国会の外で行われた緊急集会では全労連小田川氏、中央社保協山田氏が主催者あいさつ。年金者組合、全国保団連、千葉社保協、東京民医連の代表がそれぞれ活動報告。国会緊急集会を終えて駆け付けた高橋千鶴子衆議院議員が「野党4党で共同で後期高齢者医療制度廃止法案を提出した。野党4党がまとまって国会ではたたかう。国民の皆さんの大きな声が、自民党を政府を動かしている。今後の皆さんの大きな運動で、後期高齢者医療制度を廃止させましょう。一緒に頑張りましょう」と報告。国会内集会に参加された大阪社保協の寺内氏、保団連の住江会長が模様を報告しました。

●全国の皆さん、4月は目の前ですが、後期高齢者医療制度廃止にむけて全国各地でのたたかいを一層強めましょう。地元選出国会議員にあてて、要請はがきや要請行動を起こしましょう。とにかく、地元議員事務所に出向いて、私たちの声を伝えましょう。

3・12「後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める国会内集会」に集まろう

3月12日(水)午前11:00から、衆議院第一議員会館を会場に開かれます。署名や要請はがきを持って集まりましょう。私たちの声で情勢を、国会を包囲しましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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高齢期運動リポート№57

2008年3月4日(火)

高齢期運動リポート N057  2008220日(水)

084月から開始される

生活習憤病対策と保健事業について

~市町村の保健事業はどのように変るのか~  

篠崎次男

市区町村への質問事項:2月の議会にむけて、起こそう行動

1 4月より保健事業に変更が

200841日は,後期高齢者医療制度の施行の日です。全国に中止を求める熱い声が高まり,2月末の国会では「再修正」議論もありうる情勢をつくりだしつつあります。同時に,同じ41日から,市区町村の保健事業の制度が変ります。健康は高齢者のもっとも大きな生活課題です。この健康をとりまく環境が大きく変ろうとしています。この面への関心を強め,市区町村の保健事業の後退をゆるさない高齢期運動の構築も大きな課題です。制度改悪の概要と,いまからの運動課題について検討します。

2 もう一つの医療費適正化策

何が,どのように変るのか。二つの資料を添付しました。それをみながら,制度改悪の全体像の把握に務めます。(ブログには資料がのりません。すみません。)

120062月に厚生労働省が国会に提出した「医療制度構造改革」関連法案の一覧表です。厚生労働省が参考資料として提出したものです。今回の医療制度改悪では,後期高齢者医療制度の創設が最大の課題ですが,この間題と表裏の関係ででてきたのが,生活習慣病対策です。

11医療費適正化の総合的な推進の(1)(2),生活習慣病対策関連事項です。再三説明していますが,ここで言う医療費とは,社会保険の医療費のことです。その適正化とは,削減という意味で使われています。この原案がでてきたのは200510月の「医療制度構造改革試案の概要」と言う厚生労働省の政策においてです。

3 高齢者医療と生活習慣病対策

2005年の骨太方針で厚生労働省は「医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標を設定し,達成のための必要な措置を講ずる」よう厳命をうけました。

それに応えるための施策として厚生労働省は,これまでの保険料引上げ,一部負担増などの給付率の引き下げなど,保険制度の改悪(これを今回は短期的見直しと称しています)にくわえて中長期的医療費適正化策をはじめて設定しました。短期的方法だと1年間しか有効性が保てない。抜本的対策が必要だとして今回の中長期的医療費削減策を持ち出してきました。それが,11(1)'にある「生活習慣病対策や長期入院の是正など中長期的な医療費適正化」策です。

厚生労働省は,この方針が発表になった直後の平成17年度全国保険担当者会議で次のように説明しています。75歳以上の医療費が2006年度1年間116千億円かかっている。使いすぎだから数年先には1年間で5兆円の削減を実現させる。そのために長期入院の是正が必要だと強調しました。更に,同じく2006年生活習慣病の医療費に113千億円っいやしている。それをガンを除く生活習慣病(内科的な病で具体的には糖尿病,高血圧症,高脂血症「脂質異常とも最近ではいわれている」,肥満症),年間2兆円の医療費削減を実現する。後期高齢者医療と生活習慣病とはかさなりあっている部分があるとも指摘しています。

要するに,後期高齢者医療制度の新設は,医療費削減策が唯一と言っていいほどの目的です。その重要な内容の一つが新しい保健制度への転換です。それがこの4月より開始されます。

4 老人保健法から健康増進法へ

2は「各種保健事業の取り扱いについて(総括図)」です。当面何が変るのかを説明したこれも、厚生労働省の資料です。市区町村の衛生部門や国保部門で以前から使用されている資料です。

左側がこれまでの保健事業の概要です。それが右に変ります。これまでの制度は老人保健法です。この制度は3月末で廃止になり,右側の健康増進法に変ります。

老人保健法は,1983年に,老人福祉法で施行されていた老人医療費支給制度(無料制度)を廃止するためにつくられた制度です。これには高齢社会での高齢者の医療費を国民から調達(老人保健法への拠出金制度)法が盛り込まれていました。以後の国保・社保の財政赤字の要因の一つがこの供出金です。多くの国民に拠出をお願いするのだからと言う理由で,10年間続いた老人医療費無料制度が廃止になりました。いまでは,1割~3割負担が定着しつつありますが,その基礎がこのときにつくられました。

老人医療にとっては改悪でしたが,この制度ではじめて日本の国民は,国家と自治体の責任で,40歳以上と言う年齢制限はありましたが.総合的な保健サービスの提供をうけられるようになりました。憲法25条は「国民は生活のあらゆる部面で人間らしい生活を保障される」と定め,そのための重要な柱の一つとして公衆衛生をあげています。その公衆衛生としての保健事業は,まさにこの老人保健法によって本格的に開始されたと言えます。それがなくなります。残念なことに,社会保障運動としてはごく一部の公衆衛生や自治体関係者の間で取り組まれた以外,世評にはのぼりませんでした。

5 保健も市場化へ

老人保健法に取って代わる健康増進法は,政府が長年唱えてきた疾病予防・健康維持自己責任を強力に推進することを目的に,2003年に設定されました。一言で言うと,公衆衛生としての保健ではなくなりました。冒頭で国民は生涯にわたって健康に留意する責務があることを強調していますが,国や自治体は,世論喚起,いわゆる国民よ健康に留意せよと言う旗振りだけでいいと言う規定になりました。公衆衛生という言葉そのものも,この法律では使われていません。

更に,特定表示保健食品を認定し普及する(食品や医薬品をも保健の市場化で営利の対象とする路線の推進役として特定表示保健食品が登場)項目を設定したりしています。この直後からテレビ・ラジオ・新聞・雑誌等に健康食品といわれる商品の広告が氾濫し始めました。お茶を飲んで中性脂肪を抑えよう。鰹のエキスを飲んで健康になろう。一種の乳酸製品の使用などで血圧のコントロールを,飲んだり食べたりでの「健康法」が氾濫し始めました。それは年々増加の一途をたどっております。

健康増進法での特定表示保健食品の基準は,薬事法ほど厳密な審査は必要ではありません。ですから血圧に効くとか,体脂肪が減少するとかその効果をうたうことはできません。ですから「中性脂肪が気になる方に」「血圧や血糖値が気になる方に」という宣伝法をとっています。気になる方におすすめします。しかし.効果のほどは?。見たり聞いたりしている人は,気になる人に「良い筈」という錯覚を与えます。そんな課題の多い特定表示保健食品制度を先行させ,そのあとから生活習慣病対策が,この健康増進法に基づいてこの4月から施行されます。

余談ですが、健康増進法の衆議院社会労働委員会での参考人意見陳述に呼ばれました。二人が賛成、一人が反対()が意見を述べました。いつもの意見陳述の時には,傍聴席はガラガラです。その日は,100人を超える傍聴人が参集していました。賛成意見の二人の先生方や与党の応援団でした。食品や医薬品,保険会社などから派遣された人びとでした。異様な熱気を感じた,印象深い意見陳述でした。

6 患者以外は健診除外

保健事業の変更に移りましょう。

まず40歳以上の住民対象の「基本健診・健康手帳交付」の事業(実施者は市区町村),右側の特定健診・特定保健事業に移されます。実施者は各医療保険者です。この特定健診等は,現に糖尿病・高血圧症・高脂血症・肥満症の患者と予備群が対象です。保健指導も健診に付随して3ヵ月間実施されるだけです。これによって,これまで40歳以上であれば,居住する市区町村に申請するだけで希望者は原則全員受診できました。今回の制度の変更でそのほとんどの人が対象から外されます。

健診対象者であっても,生涯にわたって今のところ1回だけしか受けられません。健診は,毎年受診し、受診によって健康を確認し明日から安心してまた1年頑張ろう,そのことを確認するためのものです。万が一,生活改善や精密検査が必要な場合には早めに手当てをするなど,経年的に受診することに意味があります。対象者も保健指導の期間もごく一部に限定される今回のものは,保健・予防事業とは言えません。多くの市民,特に専業主婦や高齢者,自宅で事業を営む人びとの多くから健診の機会を奪い取ることになります。

7 保健事業は任意の事業

健診と保健指導の他に市区町村は多様な保健事業を展開しています。表2の左側をご覧ください。歯周病検診,骨粗しょう症検診(新たに肝炎ウィルス検診が付与された),健康教育,健康相談,各種のガン検診等は,「従来通り市区町村」の事業とされています。ただし,左のガン検診の下に注目してください。「平成10年度に一般財源化した後は,法律に基づかない事業として市区町村が実施」とことわりがあります。

一般財源化とは,国は予算をつけない,ということで,平成10年度以降はこれらの事業は,市区町村の独自事業として実施されていると言うことです。保健事業の場合の一般財源化とは,市町村の立場から見ると国からの予算が一方的にゼロにされたと言うことです。しかも法律に基づかない,つまり市区町村の勝手な事業だと国は言っています。こんな無茶苦茶な話はありません。

健康増進法は,それぞれの保険等の制度ごとに,その制度の傘下の人びとの健康に責任をもつという制度です。従って,国保や社保が被保険者とその家族の健康すなわち健診等に責任を持つことになります。ただし,生活習慣病対策としての健診と保健指導以外は「努力義務」(左側の「医療保険法による健診等」参照)となっています。自治体も各種保険も,国は予算措置も法的措置もしない制度にしてしまったのです。努力義務とは勝手にやりたかったらおやりなさい,というものです。憲法25条の公衆衛生としての保健事業は,限りなくゼロに近い骨抜きがおこなわれているのです。

8 ガン健診以外なくなる?

2月の議会にはどの市区町村でも2008年度予算案が提出されます。そのなかで,保健事業がどのようになるのか,注目する必要があります。

たとえば手元にある資料では,S市では,ガン健診以外の予算は計上されていません。注釈に40歳以上は国保の生活習慣痛対策へ。75歳以上は介護予防へ,となっています。これらは,さきにふれたように糖尿病等の生活習慣病対策対象者以外は健診の対象外と云うことになります。介護予防とは,介護保険の予防事業と言うことです。

健康相談・保健教育など多様な市民むけの保健事業がどうなるのか,何もふれていませんのでこの点も気になります。

9 国保が実施する健診

市区町村の生活習慣病対策は,国保が実施します。対象者や期間が限定されるほかにも、この生活習慣病対策にはいろいろな問題が潜んでいます。

検査内容が間題です。表3,赤旗新聞の切り抜きであう。生活習慣病の健診に不可欠な血液検査の総コレステロールがない。空腹時血糖値の測定,心電図検査,肺・胸のレントゲン検査,眼底検査などは必須項目から外されています。

これではたして生活習慣病の検査として不足がないか。市区町村にしっかり質す必要が

あります。

10 診断基準も暖味

4,どこの市区町村でも同じ説明をしていますが,これは東京都のある区の国保便りに掲載された表です。生活習慣病対策の対象者の説明です。第1に内臓肥満をあげています。これは2005年に厚生労働省が組織したメタボリックシンドローム診断基準検討会が発表したメタボ診断基準の概略を説明したものです。内臓脂肪が健康に有害であるとして,その危険度の目安として腹囲(へそまわり)の長さの男女別基準を提起しました。その他に血圧の価,血液検査でのいくつかの数値を示しています。

この診断基準が科学的な裏付けのないものではないかと,生活習慣病関連学会や研究者から疑問や批判がたくさんだされています。

腹囲一つとってもこの数字にどのような意味があるのか説明できていません。男女差についてもしかりです。測定法もヘソまわりですと特に女性の場合骨盤にふれて不正確になるのではとの具体的な指摘もあります。厚生労働省は,国連からの質問にも応えられず,0711月の初旬に日本肥満学会が診断基準は正しいと記者会見した直後に,診断基準に暖昧さがあるとして,正確な基準設定のための調査活動を開始するとの記者発表をしています。

11 欧州とは違うメタボ対策

メタボリックシンドロームが問題になったのは1990年代後半の欧州諸国でした。健康診断で「異常なし」と判断された中高年者の中から,脳心事故が増えていることに着目し,調査をしました。簡単に言うと,肥満気味ですが正常値です。血圧が高めですが正常値です。中性脂肪が高めですが正常値です。こんな具合に,「ちいわる状況」を3つとか4つかともっている人びとのなかから脳心事故が生まれていることを把握しました。ちっと悪い,そんな状況が複数ある,つまり症候群・シンドロームと把握しました。

欧州では,検診後それらの人びとを追跡調査しました。負荷心電図をとるとか,年間を通して定期的に検査をする。生活改善の指導をするなどでした。

日本では,医療費削減策としてのメタボ対策です。ですから,患者だけを集めて,3カ月間の保健指導だけ。おまけに検査項目も減らしています。メタボ対策ではなく医療費対策です。

こんなでたらめな健康診断・保健指導がこの4月から始まります。国民の健康への国家責任は棚上げです。後期高齢者医療制度の中止だけでなく,メタボ対策としての生活習慣病対策をも中止させねばなりません。

12 公衆衛生の危機

この保健指導・健診の受診率が低いと,後期高齢者医療制度への支援金が増額されます。とりあえず健康維持自己責任を被保険者全体で明確にするという制度です。これが続きますと,個人責任を問われることにもなります。肥満者は保険料を高くするとか,体重を低下させないと給付に差別がもちこまれるなど考えられます。

公衆衛生の維持・発展に、住民として関心をもち、その充実のための住民運動を創造することが強く求められています。

(参考文献)

篠崎次男「構造改革と健康増進法」萌文社

篠崎次男「メタボ対策に止まらない保健活動を」日生協医療部会

篠崎次男「生活習慣病対策と自治体保健師」萌文社

市町村の保健事業について、

改善と情報公開を求める自治体交渉を

今回の生活習慣病対策にはいろいろな問題点が指摘されています。自治体として国保について直接責任をもっていますので,この対策について以下の点について応えられるよう要請します。

1        生活習慣病の診断基準について,腹囲の測定等についていろいろな意見があります。厚生労働省も,診断基準見直しの調査をはじめたと聞いています。基準が暖昧のまま、新制度に移行するのは間違いではないのか。考えを聞かせてください

2        検査項目から生活習慣病診断に欠かせない項目が多数外されています。この点について考えをお聞かせください。心電図などは医師の判断にゆだねられています。これらははじめから必須検査項目にすべきです。いかがですか。

3        特定健診・特定保健指導は外注ですか。保健センターなどでの実施ですか。利用者の一部負担はどのようになりますか。健診と保健指導それぞれにどのような負担が生じるのか説明してください。

4        生活習慣病対策以外の保健事業は,今後どんな形になりますか。2007年度と2008年度の違いがありましたら、その違いについて理由とともに説明してください。これらの保健事業は,国は法律に基づかない事業だと説明しています。今後、どのような形にしていくか、考えられていることを説明してください。

5        ここ数年間に,保健師など保健職の数・配置先に変更がありましたか。あった場合、その実態について説明してください。今後、保健職の体制に変更がありますが、お聞かせください。

6        国保の後期高齢者医療制度への支援金は、どのくらいになりますか。被保険者一人当たり年間いくらになりますか。特定健診等の受診率が低いと支援金が増額されると聞いています。その実態について説明してください。保険料への影響などもお聞かせください。

篠崎次男氏の高齢期運動リポートを採録します。活用してください。

3月5日(水)12:00~13:00 国会行動に参加しよう

野党4党が「後期高齢者医療制度の廃止法案」を提出しました。5日はこの法案の成立をめざして、国会行動がおこなわれます。みなさん、国会の議員会館へ、議員面会所へ集まりましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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