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2008年4月

後期高齢者医療制度の保険料アップの事例

2008年4月29日(火)

「福田首相や舛添厚労相のいう”保険料は安くなる”は本当なのか疑わしい!」

鎌倉市在住のKTさんご夫妻から、「我が家は後期高齢者医療保険制度によって保険料が大幅にアップした!。」との情報をいただきました。お知らせします。みなさんはどうですか?

(KTさんご夫妻の場合)

平成19年度

国民健康保険料

(世帯の確定額)

126,364円

平成20年度

(後期高齢者医療制度)

Tさん(夫) 78歳

130,260円

Aさん(妻) 78歳

39,860円

合 計…世帯比較

170,120円

前年増加率(34.6%)

43,756円

(私の意見:T)

1.74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区別する理由がわからない。医学的、生理学的根拠でもあるのか。そうでなければ、こういう言い方は高齢者を差別する人権無視の発想だ。41日の制度実施にあたって、厚労省は急遽「長寿医療制度」と呼び名を変えたが、なかみは変わらないのだから、「羊頭狗肉」にすぎない。

2.しかも、その内容は保険料の引き上げだけに止まらず、医療内容についても「後期高齢者診療料」(登録医制)の設定で診療報酬を月6,000(本人負担:月600)に固定するなど、安上がり医療の意図が丸見えで、医療現場からも強い批判がでている。

3.後期高齢者医療の保険料について厚労省は、「被保険者個人単位で算定する」と説明しておきながら、低所得者の軽減措置のところでは「低所得者については、世帯の所得水準に応じて均等割額が軽減される。軽減割合は、同一世帯内の加入者および世帯主(加入者ではない方も含む)の所得金額の合計額により判定する。」として、7割、5割、2割と各減額対象者の所得金額計算例をあげている。

  しかし、この例を見てすぐにわかる人はまず少ない。それに何よりも、後期高齢者医療は個人単位の加入で、保険料も被保険者個人で算定しておきながら、軽減措置の段になると世帯合算という、ロジックに合わないことを平気でやっている。世帯合算にしたほうが保険料徴収額が増えるからだろうが、ご都合主義というほかない。

このため私の妻の場合、年額440,700円という低年金だが軽減対象にならず、均等割(39,860円)満額徴収となった。これにより、妻は介護保険料(平成19年度分42,960円)と合わせて、年金の2.25か月分が消えた。

4.広域連合という住民にはなじみのない中2階的な機構を作って、住民の意見や要望を反映しにくくさせたばかりか、市町村職員にも迷惑がかかっている。保険料は広域連合が決め、徴収は市町村まかせのため、住民の保険料についての苦情が市町村に向けられても、職員は返事に困っている。

5.従来、70歳以上の高齢者は「資格証明書」や「短期保険証」の発行対象から除外されていたが、後期高齢者医療では保険料滞納が続くと「短期保険証」となり、一年続くと保険証を取り上げ「資格証明書」の交付となる。この場合、医療費は全額自己負担となる。実に無慈悲な制度だ。

6.このような医療費抑制だけを目的とした、民意無視、高齢者いじめの制度は即時撤回すべきだと思う。

●みなさんはどうですか。TKさんのように、次のものを用意して、前年度(平成19年度)の国民健康保険料の確定通知書。それに、今年の後期高齢者医療制度の保険料通知書。後期高齢者医療制度は夫婦でも一人一人に納入義務があるので、二人分を並べてみる必要があります。(年金天引きの通知書でもいいです)。これを並べて、計算してみましょう。

● 不服「審査請求」をしましょう。

前回も書きましたが、ご自分の保険料決定通知等に“不服”を感じた人は、「審査請求」をしましょう。

①「福田首相や舛添厚労相は”安くなる”といってるが、私の保険料は”高くなった”。言ってることと全く違うでないか。」

②「本人の承諾もとらないで年金から天引きするなんて、あまりにひどいじゃないか。その理由はなんだ。天引きするなら、承諾書をとってからするべきじゃないか。」など、

とにかく、おかしいと感じた人は、不満に思う人は、不服がある人は行政の窓口に行きましょう。

そして、「不服だ。審査請求する。」と口頭でまず意思表明して、不服審査請求を受け付けてもらいましょう。

  ● 保険料が上がった人集まろう!後期高齢者医療制度に反対の人、怒りを持ってる人もみんなで集まろう!

 5月14日(水)午前11:00に厚生労働省前に集まりましょう。そしてみんなで、厚生労働省にその理由と、制度の中止・撤回を求めて、要求しましょう。

①自分の保険料計算書とその根拠をコピーして持ちよりましょう。

②”不服”審査請求をしますと、声を届けましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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京都高齢者運動連絡会第15回定期総会

2008年4月25日(金)

「後期高齢者医療制度を中止撤回させよう」と力強い意見交流

4月25日午後1時から、京都市ひと・まち交流館にて第15回定期総会が開催されました。岡本康、井上志朗、菅井孝義の3人の代表委員をはじめ、40人が参加され、熱心な議論が交わされました。

京都社会保障推進協議会の高松氏、国保料引き下げ署名実行委員会の高橋氏、日本高齢者運動連絡会山田がそれぞれ来賓あいさつしました。社保協は全国どこでも、このような市民運動の中心となって住民の幸せのために頑張って活動されているということを、あらためて確認することができた力強いあいさつでした。特に印象に残ったのは、国保引き下げの署名が短期間のうちに182,085筆を集め、京都市長選挙の重要争点となって広がり、ついには国保料の引き下げを実現させたということです。やはり京都の住民運動はすごいと感激しました。

4つの議案が提案され、討議が交わされました。2008年度活動方針で、高橋さんは6月に通知が届き、①住民税②国民健康保険料③介護保険料のこれまでの三重苦に加えて、今年から④番目に後期高齢者保険料が引かれる、本当にひどい状況となる。6月に全府下で「なんでも相談会」を開催して、府民の生活相談にとりくむと発言されました。高山さんからは高齢者の就労問題での変化が起きている。厚労省交渉でシルバー人材センターのみだったものに、高齢者事業団の活動実績がようやく認められたが、それを適用させるのは各地方自治体とのことで、そこへの働きかけを強めていく。京都市でもこれらの担当窓口をはじめて設置したが、これまでの私たちの運動がこのような変化を生んだとお話されました。中沢さんは後期高齢者医療制度の減免制度について市役所に問い合わせた。介護保険も国保もそして今回の高齢者医療制度も国の制度としてシステムとして大問題。社会保障制度そのものが崩壊させられており、これに対する運動の強化の観点で方針を強めてほしいと意見を表明されました。また、今年の第22回日本高齢者大会新潟大会に、きちんとした目標で35から42人の目標をしっかり取り組んでいく必要があると確認され、35人は絶対に参加しようと意思統一されました。全議案は満場一致で可決されました。

総会後、山田が「高齢者運動の到達と展望について」のテーマで、事務局長を引き継いで一年間の感じたことを、特に現時点での後期高齢者医療制度中止撤回の運動との関連も含めて、話をさせていただきました。

岡本代表委員はまとめのあいさつで、蜷川府知事の思い出に触れながら、「憲法をくらしに生かす」の、京都の原点に返って、これからの京都高齢者運動連絡会の組織を強化して、運動を取り組んでいこうと力強く話されました。

山田はこの会議に参加することができ、京都のすばらしい運動を直接お聞きし、肌で感じることができ、大変感激した一日でした。京都のみなさんありがとうございました。

(*本日から、バックデザインを桜から新緑に変更しました。)

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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もう我慢ならない!怒りの抗議行動

2008年4月23日(水)

もう我慢ならない!怒りの「後期高齢者医療制度強行実施への抗議行動」で厚労省前は人だかり

Photo_3  「だまっていたら身ぐるみ剥がされる。

声をあげなければ命も希望も奪われる。

天引きするな  差別するな  人権を守れ」と、厚労省前に遠くは富山から千葉県柏から神奈川から、地元東京から「後期高齢者医療制度の強行実施に抗議する『怒りの緊急抗議行動』に100人を超える人びとが集まりました。

Photo_4 マスコミのテレビカメラも4~5台が取材に入り、フランスのテレビ局の女性記者からも質問されて取材に応じる場面もありました。

全国老地連の後藤迪男さんの司会進行により、はじめに日本高齢者運動連絡会を代表して東京高連の城田さんが開会報告。続いて松岡さんが年金者組合は今日国会前で200人以上の参加で座込み抗議行動をしていることや全国各地のとりくみを報告。富山医療生協理事長の大野さんが日本生協連医療部会を代表して決意表明。中央社保協の相野谷さんから連帯のあいさつをいただきました。

96 とにかく、厚労省前は参加者とマスコミと警備とごった返しました。柏市から参加した96歳の木村まさおさんをはじめ、7人の高齢者が各自の思いをマイクで訴えました。

「080423.doc」をダウンロード

全国の高齢者の皆さん。次の行動を力をこめて行ないましょう。

①地元の国会議員に対して、与党議員には抗議と怒りの声を集中しましょう。野党議員には率直な気持ちと励ましの声を届けましょう。県議や市議にも多いに働きかけましょう。

②後期高齢者医療制度により、ご自分の保険料などの決定(行政処分という)に不服がある人は、「不服審査請求」をしましょう。●東京都後期高齢者医療広域連合のお知らせを参考に載せます。「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)において、東京都後期高齢者医療広域連合または区市町村が行った給付、保険料等に関する行政処分に不服があるときは、高齢者の医療の確保に関する法律及び行政不服審査法等に基づき、東京都後期高齢者医療審査会に対して審査請求することができます。」

③みなさん、あきらめたらいけません。声を出しましょう。制度の中止撤回(廃止)させるまで、あきらめないで、何度でも何度でも、繰り返し行動を起こしましょう。世界に類のない高齢者いじめの、人間の尊厳を傷つける医療制度は断固、廃止させましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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4月23日、緊急抗議行動に参加を

2008年4月16日(水)

4月23日(水)10:30 厚生労働省前集合!

「後期高齢者医療制度中止・撤回要求」 怒りの高齢者緊急行動にご参加を

全国老後保障地域団体連絡会(老地連)、全日本年金者組合、日本高齢者運動連絡会、日生協医療部会の4団体による、「後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める」高齢者怒りの緊急抗議行動を行います。

大勢の皆さんが、私の怒りの一言カードを持って、厚労省に突きつけましょう。怒りの一言カードは、次をダウンロードして。

「080416.doc」をダウンロード

みんなで集まりましょう。お待ちしています。

日本高齢者運動連絡会  事務局長  山田栄作

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年金・社会保障と消費税を考えるシンポジウム

2008年4月5日(土)

年金・社会保障と消費税を考えるシンポジウム

Photo_2 消費税実施20年目・特別企画シンポジウム「年金・社会保障と消費税を考える」が、45日学士会館ホールにて、全国各地から168人の参加のもと開催された。主催は消費税をなくす全国の会。パネリストは日野秀逸氏(東北大学大学院経済学研究科教授)、岩瀬達哉氏(ジャーナリスト)、暉峻淑子氏(埼玉大学名誉教授)、湯浅誠氏(反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長)、増本一彦氏(弁護士)の5人。

日野氏は、①医療「構造改革」により、医療機関の経営困難と患者自己負担が同時進行している。②地方自治体が自治体「構造改革」によって自治体財政の大きな困難に見舞われ、それが自治体病院の経営に破壊的影響を及ぼしている。③その医療「構造改革」と自治体「構造改革」とが相乗的打撃となって、一層深刻な地域医療崩壊現象を全国的に発生させている。④そして、医師不足がそれに輪をかけて深刻になっている。⑤しかし、これらに反撃する国民の運動も全国各地で巻き起こっている。勤務医自身や開業医を含む医療従事者・医療労働者、自治体労働者,住民を中軸に激しく、粘り強く進められている。医療は、「受益者負担」は成り立たない。病気になったのを「元に戻すだけ」で「益」ではない。世論調査を見ても、国民の多数は消費税を社会保障財源に当てることに反対している。

岩瀬氏は、イギリスの基礎年金の給付額は日本と同じく「定額制」で、加入機関をすべて満たせば、満額の年金(夫婦で月額約11万円)が支給される。しかし保険料は、月額約2000円の「定額保険料」と、所得に応じて額が決まる「報酬比例保険料」に分かれている。所得税の課税対象額が約100万円以下の人は定額保険料だけを納めればよく、それ以上所得のある人は定額保険料にプラスして報酬比例保険料も収める仕組み。つまり、所得に応じた設定になっている。日本は、国民年金は収入に関係なく保険料が一律で、毎月の保険料は14100円で(2017年には16900円)、所得が落ちればとたんに保険料を納められなくなる現状である。その結果未納者が4割にのぼる、異常事態となっている。年金不信はずさんな管理・運営をしてきた厚生労働省と社会保険庁に対する不信である。保険料の徴収権と給付権を厚生労働省が握っていることが一番大きな原因だ。150兆円もある年金積立金など、年金利権を手放したくないために、抜本的な改革に抵抗してきた。

 暉峻氏は、人間が助け合うためにつくられた税制や社会保障という共同領域にも、政府が新たな格差を持ち込もうとしている。日本は「国はある」けど、「社会は破綻」している。やるべきこともやらないで消費税をいうなんて、許せない。「私は怒りたくなる。怒っている」。国の赤字はいつからこんなに大きく膨らんだかというと、消費税の導入から。消費税を導入し、累進課税制度をほとんど無くしてきたからだ。しかし、それらを許してきたのも国民。国民にも責任がある。特別会計もそう。国民がおしとやかだったり、おめでたいとこういうことになる。こんなことを許しておいてはいけない。口を広げているだけではだめ。行動しなければならない。行動とは最終的には選挙になるが、行動すること。

 湯浅氏は、貧困層が拡大している。生活困窮者の若年化が進んでいる。アメリカだとおもわれていた「ホームレス二世代」が、すでに日本にも現れている。相談窓口を設けているが、以前は労働市場から排除された人が相談に来ていたが、今は働いているにもかかわらず貧困になっている人が来ている。ただ、まだ正規社員の方からの相談はない。しかし、「なんちゃって正社員」が増えているといわれ、いずれ正社員からの相談がくるのではないかと思っている。日本社会は全体に貧困化している。

 増本氏は、消費税を社会保障目的税として、消費税の増税を主張する人たちがいる。しかし本当に消費税は年金や社会保障のために使われるのか。「消費税の社会保障目的税化」とは、「国民年金、医療、介護など、社会保障経費を『消費税財源だけに囲い込んで』、ほかの財源からの持ち出しは一切しない」ということ。こんなことをしたら、消費税は際限なく上がっていく。いま、「公平」「平等」の考え方が鋭く問われている。憲法9条も危ないが、25条も危ない。「消費税、憲法変えれば、戦争税」。消費税はなくす以外にない。

080401_2 会場からの質問にも答えて

日野氏は、ヨーロッパでの消費税は「社会保障」のために作られたものではない。国民は高い負担と考えている人が多い。しかし、出すものは出すが、自分たちの為に戻ってきていると実感している、国を信頼している。賃金は基本給であるが、日本は基本給が低く、手当てで補っている。日本ほど企業負担が低い国はない。高齢化に伴って医療費は毎年増える。それを毎年2200億円削ることを小泉構造改革で決めた。米軍思いやり予算は2000億円。株取引の税率は20%となっているのを10%に軽減しているが、これを本則どおりに戻しただけで、2400億円。45年間医療問題の運動に関わっているが、今ほど運動が生き生きしているときはない。政府の目論見を運動によって、いろいろと突き崩している。運動の波は高揚している。

岩瀬氏は、厚生労働省は「少子高齢化だから」を理由にしている。しかし、ヨーロッパではそういうことはいわれない。何故、日本だけでいわれているか。ヨーロッパでは「老後を豊かに暮らす」を目的に国は仕事をしている。「国が個人の生活を支えている」。無駄をしていない。厚労省の役人は本当のことを言わない。国民はごまかされないこと。ものわかりのいい人にならないことだ。とにかく声を上げていくことが一番の力。

暉峻氏は、日本は掛け金期間が長い。20年(厚生年金)、40年(国民年金)掛けて、ようやく年金の受給権利となる。ドイツは6年間掛けたら、年金の権利がもらえる。生活保護の考え方が違う。資本の目的は資本を増やすこと。政治がそれを分配する。しかし、国民の自覚がないといけない。日本社会はパンクしている。私たちは行動しなければならない。競争にも助け合いがある。信頼される社会、人間の尊厳が大切にされる社会であってほしい。介護保険料の天引き、年金天引き。こういうことを許しておいてはいけない。行動すること。

湯浅氏は、相談に来る人は「払えない」「入れない」人が多い。73%は国保にも入っていない。ILOから指摘されてもいるが、日本は「人間らしい労働」が欠けている。「派遣」労働がそれ。消費税は「国家的貧困ビジネス」を生んでいる。反貧困ネットワークで宇都宮健司弁護士は「自民党議員を世間だと思え。ここを説得できなければ」と言った。だめな点や違いなどをすぐにあげるが、共通点を探っていくことも大事でないか。行政も縦割りだが、運動する側も縦割り。これを変えて、「世間」を大きく変えていく。

080406_2 増本氏は、消費税について「逆進性がない」という議論がまことしやかに振りまかれている。まったく違う。消費税をなくす会に加入して、運動を大きくしていきましょう。と結んだ。

日本高齢者運動連絡会  事務局長  山田栄作

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高齢期運動リポート№59

2008年4月4日(金)

高齢期運動リポート№59

後期高齢者医療制度の開始にあたって

200841日  篠崎次男

数々の成果を確認しよう。

運動に協力した人・団体、参加した人・団体に報告活動を展開しよう。

引き続き市区町村に対する改善運動を積み上げよう。

制度の中止を引き続き求めていこう。

1 引き続き闘いを

200841日、後期高齢者医療制度は施行されました。3割におよぶ地方自治体の議会での中止・凍結をもとめる意見採択。野党4党の中止をもとめる法案の共同提案など、差別医療への激しい抗議が巻き起こるなかで、厚生労働省と自民・公明の与党は、制度の施行を強行しました。

政府・与党は聞く耳を持たない。闘いが通じない。このように考えるのか、事態を冷静に見つめて闘いの成果を確認し、社会保障運動への熱い信頼のもと、新しい段階での闘いに取り組むのか、私たちは二つの道の選択をせまられています。

あきらめて天下の悪法を容認する道をすすむのか、更に闘いを続け安心の老後豊かな社会保障制度をつくり上げていく道を歩み続けるのか、選択をせまられています。

私たちはもちろん闘う道を歩みます。

2 保険給付の削減へ

  まず、後期高齢者医療制度のこれまでの闘いの道を振り返りましょう。

  この方針が厚生労働省から本格的に提起されたのは、200510月でした。当時厚生労働省は、新設する後期高齢者医療制度について盛り込むべき内容をいろいろ考えていました。考え方の基本は、75歳以上の高齢者への社会保険給付費の大幅な削減です。ついで65歳から74歳までの前期高齢者、とくに団塊の世代と言われる高齢者の国保加入による、他の医療保険財政との格差の増大にそなえるための措置を盛り込む。それらをこめての後期高齢者医療制度づくりでした。

3 当初計画にあって撤回したもの

 その保険給付の削減です。最初厚生労働省が新制度に盛り込む予定であった削減策のうち、導入を断念させてものがいくつかあります。

1)保険免責制度

 一番大きいのは、保険免責制度の導入を断念させたことです。1回の受診での診療費のうち、保険給付の対象にしない金額を設定する。たとえば免責額を2000円とする。その場合受診日の診療費が4000円だとする。まず2000円は自己負担。残りの2000円の1割負担で200円。総計で2200円が窓口負担負担となる。3割負担だと2600円となる。この保険免責制度は導入しませんでした。

2)ホテル機能全部保険外

 2に、入院の際のホテル機能サービス保険給付外問題です。具体化は食費と部屋代の一部負担制でした。ホテル機能だとこれに看護料、入浴・体の清拭などヘルパーのサービス料なども含まれます。要するに在宅と同じサービスしか提供しないというのが政府の意図する内容でした。

3)徹底した包括医療

 3に、外来医療の包括制、完全主治医制の導入も計画にありました。包括制とは、1日あるいは1カ月○○円で、すべての診断治療を行うというものです。具体化では、患者の選択のもと、診察と検査料が月6000円とするという部分的包括制に止めました。主治医制も、患者に1名登録させる。主治医以外の受診は制限する。これも他の医療機関への受診制限を阻止しました。

4)予防と保険料引上げの連結制

 4に、国保や他の医療保険からの支援金の徴収法も最初の予定通りにはなっていません。20084月からスタートした生活習慣病対策としての医療保険者が実施する特定健診・特定保健指導の受診率が33%以下だと、10%を上限に支援金の上積みを義務づける。在宅看取り(自宅で半年から1年療養して自宅で死んでいく)率が低いと支援金の上積みを義務化する。これは健診率が低い場合は平成25年度の状況で実施する、に後退させました。在宅看取り率については導入を見合わせています。もしこれが当初の予定通り導入されていたら、国保も他の公的医療保険も、毎年1割を上限に保険料の引上げが自動的に実施されることになっていたかもしれません。

5)法律成立後も修正が

 法律が国会で成立したあとからもいくつかの修正を政府はしています。安倍内閣が参議院選挙で大敗しました。その直後の福田内閣では、自己負担の1年間の「凍結」を打ちだしました。具体的に①70歳から74歳までの自己負担2割への引上げを200710月実施を平成20年度の1年間凍結。後期高齢者医療制度における被用者保険の被扶養者であった者の保険料徴収を平成204月から9月までの半年間凍結、10月から翌年の半年間は応益割は9割の負担とする。

6)執行前にも譲歩を

 この保険は都道府県ごとに組織された広域連合が運営します。昨年の11月に保険料 率がきめられました。その結果、保険料が当初予定より高額になる都道府県がたくさん生まれました。これへの苦情も多くだされています。そのため東京都では、所得の低い高齢世帯の保険料を若干引き下げました。

7)松山市では差額補填

 愛媛県松山市の市議会は市長の提案により、保険料への補助制度を可決しました。松山市では、年収153万円以下の高齢者の保険料が国保の保険料よりも上回っていました。そこでこの層にたいして、後期高齢者と国保との保険料の差額を市が負担することになりました。年間6500万円の予算がその費用として計上されました。制度が動きだす直前になっての措置は異例です。おそらく細かく点検していくと、市区町村の多様な補助・負担軽減策がとられていることと思います。(成果をお知らせください)

8)闘う連帯づくりも前進

 この間に私たちは、地域のいろいろな人びとや団体に共同の取り組みを呼びかけてきました。老人会、町内会、地区医師会、いろいろ労働組合等にも呼びかけました。これからの運動につながる運帯も培われつつあります。

ひとびととの連帯の輪が一回り大きくなりました。

 制度全体をいまのところ中止には追い込めませんでしたが、かなりの譲歩を実現させています。これらは闘いがなかったら実現しません。200510月以降の私たちの果敢な闘いなしに、これだけの譲歩や人びととの連帯は勝ち取れません。

 社会保障運動の意義と意味について、あらためて再確認すべきです。元気になります。

4 闘いを更に発展させよ

 しっかり成果の確認をしよう。

 闘いの経過と成果を、地域と諸団体に報告し、お礼をしよう。

 新制度の、より深く正確に理解するための学習会を開こう。

 200841日を期して、私たちは新たな闘いに挑まねばなりません。

 1に、これまで多くの人びと団体の協力をえてきました。署名に賛同してくれた人、学習会に参加してくれた人、多くの団体に、これまでの経過と結果について報告せねばなりません。どこまで運動が拡がったか、譲歩を勝ち取ったかなどについてはしっかり報告し、協力に謝意をあらわすべきです。

 2,それぞれの団体で、1つの区切りをつけるに際して、運動の到達点と政府や自治体に実現させた譲歩・成果についても報告し、運動してきたことの意義についても認識を深める。各団体ごとに、構成員と成果の確認をし合うことは次なる闘いへの準備としても大切です。

 3に、正確に新制度について、とくに医療内容については未知の部分もあります。再学習会を開催し、内容を深く知る機会も持つべきです。

5 自治体行動を積み上げよう

 市区町村への働き掛けを持続的に、しかも強力に展開する。

1)保険料間題の取り組み

 松山市の例にもあるごとく、国保保険料との差額を市区町村が補填する。そのため、都道府県ごとにきめられた保険料率に従い、市区町村ごとの保険料の実態について公開させる。とりあえずの要求として、国保保険料の差額が出ていたらその差額を補填させる。一般的には、低所得者が負担増になっています。差額の補填は正当な要求です。

 天引きすることのできない無年金者・低年金者から、保険料の徴収をしていいのか。市民にも市区町村にも議会にも率直に問題提起をする。ましてや滞納者はすべて悪質との規定のもと、保険証を交付しない措置はやめさせる。この階層の人びとの保険料を市区町村が負担する。そんな補助制度も要請すべきです。

 保険料の減免制度の確立にむけて、広域連合への陳情・署名での要請行動を強める。

2)病床削減間題の重視を

 市区町村では、すでに都道府県に削減の対象になる医療機関と病床数についての報告がなされています。その原資料の公開を求めねぱなりません。

      まずその前提となるべき都道府県医療費適正化計画のもとになる、市区町村の数字  の公表をもとめます。高齢者医療確保法第8条に基づき国が提示する「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」では、都道府県が保険給付費を削減するための目標値が示されています。削減目標値・その方法・計画・医療費の調査などが盛り込まれることになっています。都道府県ではこの計画を4月中にすることになっています。ということはその原資料が3月中に市区町村から都道府県にあげられています。その数字を明らかにする。

      生活習慣病患者の医療費をどの程度削減するのか。後期と前期の高齢者の医療費をどこまで削減するか。そのため高齢者むけの療養型病床を幾つ削減するかなどが示されています。

      介護保険で入院できる病床が、市区町村内のどの医療機関に幾つの病床があるのか。これは数年先に全廃が予定されています。

      医療保険で入院できる療養型病床が、市区町村内のどの医療機関に幾つの病床があり、そのうちどこの医療機関から幾つ削減するのか。

      市区町村内の高齢者の平均在院日数が200710月現在何日だったのか。それが何日短縮するのか。この数字も公開させる。

      その結果として、市区町村からどの程度の病床がなくなるのか。まず計画にのせられた数字の公開を求めます。

      厚生労働省は当初平成18年時点で35万床(医療療養病床23万床・介護療養病床12万床)あり、それを15万床まで削減するとしていました。都道府県から出された計画は、国のこの数値を上回る数であったと伝えられています。市区町村から都道府県にあげられた数字を公開させる必要があります。

      病床削減については強い批判がよせられています。国は多少の譲歩もやむを得ないと言ってもいます。その国の計画を上回る数値を市区町村が出していたとするなら、撤回させねばなりません。

      更に、削減の結果地域のどのような不安が拡がるか、市区町村の予測と対応策の有無について質す。

      市区町村の責任で、市内の医療機関に高齢者用緊急入院用病床を確保させる。

      住民が入院先が見つからず困っている事態が生じたら、電話相談を受ける制度も作らせる。一人暮らし二人暮らしの高齢世帯にはその電話番号を張り出させて,いつでも電話できる体制も整備させる。(孤独死防止にも役立つ)。動物愛護法では市区町村に犬と猫に限りますが施設に収容する義務が課せられています。高齢者にもこのような制度があって当然です。

 具体的な要求で、くりかえし、くりかえし、市区町村に働きかけよう。

 各団体こぞって仲間増やしをすすめ、ひとりぼっちの高齢者を無くそう。

6 次に備えよう

 国と与党は、次なる社会保障の改悪を企てています。

1)消費税の税率引上げ阻止を

 消費税の税率引上げが声高に叫ばれています。後期高齢者の医療・介護・年金の財源問題としての消費税論議です。高齢者医療を闘う力と消費税引上げ阻止を闘う力を結合させて大きな国民運動に発展させよう。

2)国民医療への拡大阻止

 食費や部屋代の負担は若い世代にも拡大は必至です。2年先の診療報酬制度での包括制・保険免責制など完全導入もあり得ます。

 若い世代との連帯を強め、後期高齢者医療モデルの拡大を許さない闘いを強め、後期高齢者医療の改善につなげていこう。

      後期高齢者医療制度の中止を強く要求しよう。

      後期高齢者医療制度で後期高齢者の生活と健康への被害をださない活動を強化しよう。

      弊害事例を集め、政府へ突きつけ、改善につなげよう。

      仲間増やしで、ひとりぼっちを無くそう。

以上、篠崎次男顧問の高齢期運動リポートをお届けしました。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作

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後期高齢者医療制度開始にあたって

2008年4月1日(火)

後期高齢者医療制度実施にあたっての記者会見

Photo 3月31日午後3時から、厚生労働省9階の厚生労働記者会において、医療団体連絡会議の記者会見が行なわれた。保団連の住江憲勇会長、日本医労連の田中千恵子中央執行委員長、全日本民医連の鈴木篤会長、日本生協連医療部会藤谷恵三事務局長が記者会見に臨んだ。医団連は以下の6団体で構成(全国保険医団体連合会、日本生活協同組合連合会医療部会、全日本民主医療機関連合会、日本医療労働組合連合会、新日本医師協会、日本患者同盟)。

記者会見では以下のような声明が配布され、いのちの平等を奪う「後期高齢者医療制度の廃止」にむけた国民的共同を呼びかけられた。

<声明>

人間の尊厳を奪う医療差別を導入する「後期高齢者医療制度」は、直ちに廃止を   200841

本日、「後期高齢者医療制度」が施行されました。

後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者1,300万人を健保や国保から追い出し、保険料は年金から天引き、収入のない人からも保険料を徴収、払えなければ保険証を取り上げるという世界に類のない過酷な制度です。

後期高齢者は①複数の病気があり、治療が長期にわたる、②認知症が多い、③必ず死を迎えるとして、診療報酬に「包括払い(6,000)」や「尊厳ある死を迎えることを奪うおそれのある終末期医療のしくみ」を導入し、75歳を境に医療内容を差別するもので、いのちの平等を奪う非情な制度です。

私たち医療団体連絡会議はこのような国民の命と健康を年齢で差別する憲法違反の制度を絶対に認めることはできません。制度の施行にあたり、あらためて医療費削減のための「後期高齢者医療制度」を強行成立させた政府と自民党、公明党の責任は重大です。

制度の内容が国民に知られる中、反対の声が日に日に高まっています。制度の中止を求める請願署名は、500万筆を超え、中止・見直しを求める地方議会の決議・意見書は540を超えています。私たちは、あらためて国民のみなさんにこの「後期高齢者医療制度」の廃止・撤回を一日も早く実現させるための国民的共同を呼びかけます。

現在の日本の医療費・社会保障費は、GDP比で欧米の半分程度であり、莫大な薬剤費や医療材料費を適正化することをはじめ、史上最高の利益を上げ続けている大企業への適正な課税を行い、保険料の応能負担を徹底する、無駄な公共事業や軍事費・米軍思いやり予算を医療や杜会保障の充実にまわすだけで、日本の医療は改善できます。

わたしたち医療団体連絡会議は、広範な国民と力を合わせて、政府の低医療費政策・構造改革路線をあらためさせるために、さらに奮闘します。野党四党が国会に共同提出した「後期高齢者医療制度廃止法案」の審議を促進させ、制度を廃止・撤回させるためにともに手を携えましょう。

  医療団体連絡会議

テレビカメラ5台が取材されていましたが、報道されるかどうかはわかりません。ニュースなどを注視していきましょう。

◎厚労省前では、通院移送費(交通費)を打ち切らないでと 宣伝行動

2_3 記者会見が行なわれている同時刻に、厚労省前では生活保護問題対策全国会議、中央社会保障推進協議会、全国公的扶助研究会、全日本民医連、NPO法人自立生活サポートセンターもやい、全国生活と健康守る会連合会の方々が、街頭から要請宣伝行動を取り組まれておりました。

<配布されたビラの一部を紹介>ぼくは毎月3回○○駅の○○医大に通院しています。往復400円で月3回通院、合計1200円。今でも、移送費を申請するのに、同じ○○医大の中なのに、眼科・内科・循環器科・整形と、毎月、科ごとに医者から意見書をもらわなくてはなりません。先生によってはすぐに書いてくれない先生もいます。そうすると、もうあきらめて、もらわなかった月もあります。移送費をもらうのに、病院にも保護課にもそのつど気をつかい、何度も「もうええわ」と嫌になったこともあります。しかし、1200円といえば、2日分の食事代にもなります。不正に受給した(北海道滝川市の)事件があったので、こういうことをするのでしょうか?それなら、それは理由になりません。最低生活をかろうじて維持している保護費だから、移送費があるのでしょう。老齢加算、母子加算の廃止、そして今度の移送費、いまに冬季加算まで廃止するのでは?(56歳男性)

生活保護の通院移送費と母子加算の削減中止を求める要請書

 国・厚生労働省は、4月1日から生活保護の通院移送費と母子加算の削減を強行しようとしています。これらの削減が強行されれば、実質的な基準引き下げになり、生活保護世帯の生存権を著し<脅かすものです。通院移送費の削減は、受診抑制をひきおこし、医療を受ける権利を奪うものでもあリます。
 同時に、生活保護世帯や自治体の意見を十分に聞かずに、3月4日に発表して、4月1日実施はあまりにも乱暴なもので、手続き的にも大問題です。
 母子加算の削減は、「服を買ってあげられない。高校の修学旅行を断念させなけれぱならないか不安」など、子どもたちの学ぴ成長する権利をおぴやかすものです。
 私たちは、生活保護の通院移送費と母子加算の削減中止を求めます。厚生労働省が各自治体に通院移送費削減の「通知」を出すのを延期し、再検討することを強く求めます。  (連絡先:全国生活と健康を守る会連合会)

 みなさん、声を上げましょう。後期高齢者医療制度の廃止をめざして、一層頑張りましょう。

日本高齢者運動連絡会 事務局長  山田栄作 

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