年金・社会保障と消費税を考えるシンポジウム
2008年4月5日(土)
年金・社会保障と消費税を考えるシンポジウム
消費税実施20年目・特別企画シンポジウム「年金・社会保障と消費税を考える」が、4月5日学士会館ホールにて、全国各地から168人の参加のもと開催された。主催は消費税をなくす全国の会。パネリストは日野秀逸氏(東北大学大学院経済学研究科教授)、岩瀬達哉氏(ジャーナリスト)、暉峻淑子氏(埼玉大学名誉教授)、湯浅誠氏(反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長)、増本一彦氏(弁護士)の5人。
日野氏は、①医療「構造改革」により、医療機関の経営困難と患者自己負担が同時進行している。②地方自治体が自治体「構造改革」によって自治体財政の大きな困難に見舞われ、それが自治体病院の経営に破壊的影響を及ぼしている。③その医療「構造改革」と自治体「構造改革」とが相乗的打撃となって、一層深刻な地域医療崩壊現象を全国的に発生させている。④そして、医師不足がそれに輪をかけて深刻になっている。⑤しかし、これらに反撃する国民の運動も全国各地で巻き起こっている。勤務医自身や開業医を含む医療従事者・医療労働者、自治体労働者,住民を中軸に激しく、粘り強く進められている。医療は、「受益者負担」は成り立たない。病気になったのを「元に戻すだけ」で「益」ではない。世論調査を見ても、国民の多数は消費税を社会保障財源に当てることに反対している。
岩瀬氏は、イギリスの基礎年金の給付額は日本と同じく「定額制」で、加入機関をすべて満たせば、満額の年金(夫婦で月額約11万円)が支給される。しかし保険料は、月額約2000円の「定額保険料」と、所得に応じて額が決まる「報酬比例保険料」に分かれている。所得税の課税対象額が約100万円以下の人は定額保険料だけを納めればよく、それ以上所得のある人は定額保険料にプラスして報酬比例保険料も収める仕組み。つまり、所得に応じた設定になっている。日本は、国民年金は収入に関係なく保険料が一律で、毎月の保険料は1万4100円で(2017年には1万6900円)、所得が落ちればとたんに保険料を納められなくなる現状である。その結果未納者が4割にのぼる、異常事態となっている。年金不信はずさんな管理・運営をしてきた厚生労働省と社会保険庁に対する不信である。保険料の徴収権と給付権を厚生労働省が握っていることが一番大きな原因だ。150兆円もある年金積立金など、年金利権を手放したくないために、抜本的な改革に抵抗してきた。
暉峻氏は、人間が助け合うためにつくられた税制や社会保障という共同領域にも、政府が新たな格差を持ち込もうとしている。日本は「国はある」けど、「社会は破綻」している。やるべきこともやらないで消費税をいうなんて、許せない。「私は怒りたくなる。怒っている」。国の赤字はいつからこんなに大きく膨らんだかというと、消費税の導入から。消費税を導入し、累進課税制度をほとんど無くしてきたからだ。しかし、それらを許してきたのも国民。国民にも責任がある。特別会計もそう。国民がおしとやかだったり、おめでたいとこういうことになる。こんなことを許しておいてはいけない。口を広げているだけではだめ。行動しなければならない。行動とは最終的には選挙になるが、行動すること。
湯浅氏は、貧困層が拡大している。生活困窮者の若年化が進んでいる。アメリカだとおもわれていた「ホームレス二世代」が、すでに日本にも現れている。相談窓口を設けているが、以前は労働市場から排除された人が相談に来ていたが、今は働いているにもかかわらず貧困になっている人が来ている。ただ、まだ正規社員の方からの相談はない。しかし、「なんちゃって正社員」が増えているといわれ、いずれ正社員からの相談がくるのではないかと思っている。日本社会は全体に貧困化している。
増本氏は、消費税を社会保障目的税として、消費税の増税を主張する人たちがいる。しかし本当に消費税は年金や社会保障のために使われるのか。「消費税の社会保障目的税化」とは、「国民年金、医療、介護など、社会保障経費を『消費税財源だけに囲い込んで』、ほかの財源からの持ち出しは一切しない」ということ。こんなことをしたら、消費税は際限なく上がっていく。いま、「公平」「平等」の考え方が鋭く問われている。憲法9条も危ないが、25条も危ない。「消費税、憲法変えれば、戦争税」。消費税はなくす以外にない。
日野氏は、ヨーロッパでの消費税は「社会保障」のために作られたものではない。国民は高い負担と考えている人が多い。しかし、出すものは出すが、自分たちの為に戻ってきていると実感している、国を信頼している。賃金は基本給であるが、日本は基本給が低く、手当てで補っている。日本ほど企業負担が低い国はない。高齢化に伴って医療費は毎年増える。それを毎年2200億円削ることを小泉構造改革で決めた。米軍思いやり予算は2000億円。株取引の税率は20%となっているのを10%に軽減しているが、これを本則どおりに戻しただけで、2400億円。45年間医療問題の運動に関わっているが、今ほど運動が生き生きしているときはない。政府の目論見を運動によって、いろいろと突き崩している。運動の波は高揚している。
岩瀬氏は、厚生労働省は「少子高齢化だから」を理由にしている。しかし、ヨーロッパではそういうことはいわれない。何故、日本だけでいわれているか。ヨーロッパでは「老後を豊かに暮らす」を目的に国は仕事をしている。「国が個人の生活を支えている」。無駄をしていない。厚労省の役人は本当のことを言わない。国民はごまかされないこと。ものわかりのいい人にならないことだ。とにかく声を上げていくことが一番の力。
暉峻氏は、日本は掛け金期間が長い。20年(厚生年金)、40年(国民年金)掛けて、ようやく年金の受給権利となる。ドイツは6年間掛けたら、年金の権利がもらえる。生活保護の考え方が違う。資本の目的は資本を増やすこと。政治がそれを分配する。しかし、国民の自覚がないといけない。日本社会はパンクしている。私たちは行動しなければならない。競争にも助け合いがある。信頼される社会、人間の尊厳が大切にされる社会であってほしい。介護保険料の天引き、年金天引き。こういうことを許しておいてはいけない。行動すること。
湯浅氏は、相談に来る人は「払えない」「入れない」人が多い。73%は国保にも入っていない。ILOから指摘されてもいるが、日本は「人間らしい労働」が欠けている。「派遣」労働がそれ。消費税は「国家的貧困ビジネス」を生んでいる。反貧困ネットワークで宇都宮健司弁護士は「自民党議員を世間だと思え。ここを説得できなければ」と言った。だめな点や違いなどをすぐにあげるが、共通点を探っていくことも大事でないか。行政も縦割りだが、運動する側も縦割り。これを変えて、「世間」を大きく変えていく。
増本氏は、消費税について「逆進性がない」という議論がまことしやかに振りまかれている。まったく違う。消費税をなくす会に加入して、運動を大きくしていきましょう。と結んだ。
日本高齢者運動連絡会 事務局長 山田栄作
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